手のひらを透かしてみれば

製作後記:企画室磁場の一発目の公演ということもあり、磁場としてやりたいこと(システム)よりも僕らの世界観とかスタイルを見せたいというのがあった。「濃厚な会話劇を作る」そう決めた。それと「現代の演劇を作る」というのも目標で、どうやって現代というものをとらえようかと考えた時、社会と一つのカップルを対比した作品にしようと決めた。当時は”安保”に対して意見が分かれ与党と野党は対立、デモの機運も高まっており「sealds」という若者が立ち上げた運動グループが注目を集めていた。ここに焦点を合わせ作品の構想を具体的にしていく中、デモの見学に国会議事堂へ行き参加したのだが、感じたのは違和感だった。その時は自分も「安倍反対」と言って思ってきたのだが、これは違うと感じた。少なくともあのデモには納得がいかなかった。それから大きく作品の方向性は変わった。それまでどちらかの”側”にいた自分を否定した。どちらかに振れると人は見えるものが見えなくなる、ということを感じた。作品は”側”に立った人たちが登場する。観客はその”側”から観るだろう。真ん中に立って観る人はどれだけいるのだろうか。僕はそういったことへの批判などではなく純粋に見たかった、観客がどちらに振れるのかを。主人公である恩田はとにかく間違える。デリケートな問題で間違いなどないのだろうが彼は間違えるのだ。しかし、正しくなるための指針はどこに持てばいいのか。それは道徳書の中には書いていないと僕は思う。ではどうすればいいのか、それはこの作品を観た後に大いに語ることでその私とあなたの間だけほんの少し見えてくるのではないだろうか。[浪打賢吾]

[出演]
植田崇幸
北川竜二
土田祐太
時田光洋
西井裕美

[スタッフ]
浪打賢吾 脚本・演出
富山貴之 照明
泉田雄太 音響
笹浦暢大 舞台監督
杉山礼香 宣伝美術
bozzo スチール
翔太郎 映像
奥田英子 制作
末吉慶子 制作

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